『青春の彷徨』-埼玉県立川越高等学校山岳部創立90周年記念誌―(総頁391)
(2009年5月10日発行 川越高等学校山岳部OB会)
エベレスト登頂がまだ達成されていない1923年、英国の登山家マロリー(George Herbert Leigh Mallory1886- 1924)が講演先でニューヨーク・タイムズの記者から“Why did you want to climb Mount Everest?”と問いかけられ“Because it’s there.”と答えたという。”it” は無論Mount Everest。前人未踏の山に挑む心意気を述べたものであろうが、爾来「そこに山があるから」と言い慣わされた名言は時代とともに人口に膾炙していったと聞き及ぶ。
本校登山部は旧制中学校時代の大正8年(1919年)創立。「自然の美を穢さず流行的なものではない雄偉剛健の気を養い又学術の研究」を目的として当時の学友会に設置された。初登山は富士山。翌年は木曽御嶽山に登頂。その翌年には戸隠から白馬岳を踏破している。戦時中に一時活動を休止するも、終戦の翌昭和21年(1946年)に活動を再開、雲取山を目指した。その雄偉剛健の気は100年を超える現在に至るまで脈々と受け継がれている。記念誌からは、山に魅せられたそれぞれの時代の青春群像が浮かんでくる。