本校開校以来、卒業生の方々のあまたある著作物の中で
一番最初に上梓されたものはなんだろう、と書籍散歩してみました。
すると一冊の本に行き当たりました。
表題は『悲哀の情緒の研究』です。
著者は旧制川越中学校第一回卒業生(明治36年3月30日卒)の岡田恒輔氏です。
氏は本校卒業後、東京帝国大学文科大学哲学科に入学。
その哲学科の卒業論文として提出したものに加筆修正しまとめられたのがこの書です。
裏表紙には、明治44年12月18日発刊、と記されています。
338頁に及ぶ大論文の概要を記すのは不可能ですが、その一部をご紹介しますと
前編の「悲哀の情緒とは何ぞや」という問いかけから始まり、情緒研究の必要性、
その原因経過など時代を述べられ、その前半のまとめ「悲哀の情緒の救済法」では、
以下の小項目をあげ、縷々述べられています。
身體を健全にせよ /平生より快濶なる態度、容貌、言行を為せ / 快濶にして樂天的なる精神を養へ
/ 適度に泣け / 注意を他に轉ぜよ / 親しき人に打明けて同情を求めよ
今の時代にあっても、十分納得させられることが多くあります。まさしく先見の明と思います。
尚、岡田恒輔氏はその後、旧制川越中学校時代の校長として赴任されています。
*広辞苑で「哲学」という言葉を紐解きますと、西周氏がPhylosophyの訳語を作るにあたり、
「賢哲の明智を希求する」という意味で希哲学と訳し、後に「哲学」という訳語に定着したとのことです。
明治という時代にあって、まさしく新しい学問であったと推察します。
岡田恒輔氏の勇躍として向かっていく、若き志に思いを馳せました。